設定とキーワード
時代
時は戦国。ちょうど織田が餅ついて、豊臣がこねて、徳川が食っちゃうあたりの移行期全般をふわっと思い描いてください。
ただし物語の都合上、史実の出来事の発生年を前後させてます。
アイテム 〈秘伝〉 ※ネタバレになるところは反転仕様にしてます。
 かつて大陸から渡ってきた稀代の方術師が、この世の理と森羅万象の極意を書き記した書。しかし完成後、あまりにも強すぎる力を秘めたそれに術者自身が危惧を抱き、〈天義之書〉と〈地義之書〉の二つに分かった。決して奪われぬことを願い、一方を高名ではあるが厳重に護られた忍びの里に、もう一方は流れ者だが人知れぬ忍びに密かに与える。一般的に知られる〈秘伝〉は〈天義之書〉のことで、〈地義之書〉の存在は秘匿されているため、二つあることを知る者はほとんどいない。完全相伝の形で代々一人にのみ受け継がれる。人知を超えた力を持ち、継承者は自由にそれを操ることができる。ただし伝授を終えると、先代は必ず長くせずして死ぬ。

 戦国の世となり、〈秘伝〉を手にした者が天下を制すという噂が流れるようになる。〈秘伝〉を有する隠れ里・京里忍城はこのため天下の野心家達に虎視眈々と狙われるようになる。〈秘伝〉は京里忍城の里長が継承するしきたりとなっており、雷蔵は次期里長候補としてそれを先代から口伝で譲り受ける。

 普段は普通の巻物の形をしている。開いても中身は白紙。巻物自体はいわば仮の器で、中の文字は、伝授と同時に継承者の体内へと納められる。継承者自身が真の器であり〈秘伝〉そのものとなる。継承者は〈秘伝〉の術を文字通り体得し、己の意思で自由に扱うことができる。術の規模が大きく生身で耐えきれぬ場合は巻物に一旦移して使うこともある。巻物に移す際には『解紐』という咒を唱える。実は護法神が宿っており、すべての文字を巻物に戻すと変化させることもできる。〈天義之書〉に憑いているものは龍の姿、〈地義之書〉は虎の姿を象る。
 巻物には強い呪が幾重にもかけられており、継承者の手元を離れても1日経てば、どれほど固定していても必ず戻ってくる仕組みになっている。また、遠く離れてしまった巻物を『呼ぶ』こともできる。
 通常は継承者以外の人間が巻物を見ても白紙なので読めないが、中身を巻物に移している時に開いた場合、継承者の許可がないと護りの呪が発動しその人間の命を奪う。
 また継承者が次代に伝授する前に死亡した場合、〈秘伝〉の中身は自動的に巻物に戻る。次の継承者は護法神が選ぶ。
京里忍城
 山城(今の京都一帯の地名)の山奥にあったとされる伝説の忍びの里、あるいはその集団の名称。伊賀、甲賀と並んで『山賀』と称せられることも。雷蔵が所属していた忍軍。
 京の裏手に位置し、丁度鏡のように対象であったため、京里忍城と名付けられた。一般の忍びや非戦闘員(生産要員)の住む外里(がいり)の中に、主要機関の集まる大内里(だいだいり)があり、更にその中に里長の屋敷や機密機関を含む内里(だいり)がある。部署、役職は宮中の名称を通称としている。

 土地に根付いてはいるが、基本はどの勢力にも属さず、依頼を受けて忍びを貸し出す。雷蔵をはじめ何人もの名うての忍びを擁し、伊賀甲賀にも劣らぬ強力な勢力を築いていたが、織田信長の台頭と共に、その奇襲を受けるところとなる。里は通称陰陽寮の術によって何重にも結界を張り隠されていた。正しい道を知るのは里の者だけで、許されざる者は誰一人として辿りつくことはできなかったのだが、内通者が現れ織田軍を手引きしたために、ついに焼き滅ぼされてしまった。
 生き残った者は残党狩りを恐れて遠くへと散り、今も消息が掴めない。
アイテム 龍弦琵琶
 雷蔵が常に持ち歩いている楽器。見た目・形状は琵琶によく似ており、実際その側面を持つが、胡弓にもなる特殊な楽器。撥でも打つことも弓で弾くこともできる。このため別名を弓弦琵琶とも言う。打ちの音は日本の琵琶よりも大陸の琵琶寄り。
 〈龍の民〉に伝わる神楽楽器で、決まった者が奏でることでこの世に宿る魂や霊に働きかけることができる。〈龍の民〉においてはその他に神降ろしの儀にも用いられ、奏者は古来より審神者(さにわ)を兼ねた。ちなみに龍弦弾きの他にも、縦横笛を併せ持つ龍笛(りゅうてき)吹き、鼓と太鼓を併せ持つ龍鼓打ちなどがいて、それぞれに龍に纏わる楽器を所持するが、演奏上の便から神と交渉する審神者役は龍弦弾きが担う。
 原材料は不明だが、村の言い伝えでは弦は龍の髭、撥と弓幹は牙、弓毛は鬣、本体は樹齢千年の御神木からなっているとされる(龍鼓の本体もこれで、膜は龍の皮、龍笛は骨でできている)。そのためか弦や弓毛は強靭で切れたり劣化することがなく、撥や弓は鋼よりも硬い。本体の木が温度や湿度に左右されることもない。大変稀少な楽器で、楽器が弾き手を選ぶ。雷蔵の家が所有していた。

 奏法は大きく分けて三種あり、通常の琵琶と同じく撥で弾く「撥打ち」、胡弓のように弓で弾く「弓弾き」、指だけで爪弾く「指弾き」がある。主な演奏は前二者だが、場合によって手軽な「指弾き」を選ぶこともある。奏法によって影響力が異なり、状況の程度によって使い分ける。
 撥と弓は取り外しがきくが元々は一体で、最も正式な演奏法では「打ち」と「弾き」を同時に弾き分ける。高度な技術が求められる分、効果が強い。
 また音階も様々にあり目的に合わせて調音し、固定器具をつけることで音ズレを防ぐ。弦は劣化することはないので、いつでも使えるように基本はそのままにされる。
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